地上最強のブログ

しばいてくぞ

首なし死体が走る (1)

 

題:斬首されてから首無し体になって、前を走った数だけ部下の命を救ってもらいたいと言って、実行してしまった男、というモチーフ。

が近年に日本で見られたのが、「バキ」シリーズの『範馬刃牙』の第19巻(秋田書店、2009、9784253210072)の32~37頁、鎬紅葉が話す逸話。絵を見ると舞台を昔の日本らしきものにしている。

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近年に日本でと言うなら、斬首後に人体が動き回っているというだけの話だが2009年のエンタメ小説「大江戸打首異聞」(『多聞寺討伐』(9784594059224)の291~311頁)など見つかる。

近年といわず日本というなら、坂口安吾などがそんな話をしている。1968年出版の『定本坂口安吾全集』第2巻(冬樹社、1968)収録の「五月の詩」冒頭部分(398頁)。武士3~4人が首刎ねて動けるかと盛り上がって実際刎ねて多少歩いた、鴎外か露伴な気がする、と述べてるだけのこと。

そっちの坂口はどうでもいいんでそんなことより坂口渚沙の話しようぜ

後2作が主題と無関係、『刃牙』だけが問題。紅葉に板垣が語らせている逸話の典拠であろうものとして、1990年出版の『グリムドイツ伝説集』下巻(9784409530108)中の1伝説(189頁)や、その伝説を収録したものであろう1984年出版『世界の怪談―怖い話をするときに』(ワニ文庫、1984、9784584300381)の1文章(182頁)ぐらいが見つかる。

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本記事の主題、まずは、グリム兄弟による『ドイツ語圏の伝説集〔Deutsche Sagen〕』収録の1話である。この1話が板垣にまで伝わったのかどうか、その糸は辿れない。だからドイツ語圏側で糸を辿ってみるだけになる。

この記事が始まった端緒だが、

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という2017年出版の少年少女向け小説を2017年に読んでいて、14世紀の海賊「フィタリエンブリューダー〔Vitalienbrüder〕」の1人Klaus Störtebeker(um 1360–1401)の伝説が出てくる(日本語でもそこらの雑記事で読める)。主人公が大事に臨んで勇気をもらう相手がこのStörtebeker、最初に登場するのが博物館でその頭蓋骨を訪ねた時。189~191頁、「Grasbrook」で処刑されて部下の前を「12m」走って「30人」全員を助けたと話す。Wikiの記述(助けるのが11人、しかし約束破られ部下73人全員処刑)と数字等が異なるが、当地で有名なこの逸話を聞いたままに書いているだけであり「12m」もStörtebekerを描いた映画「12 Meter ohne Kopf」(2009)から引いているだけ。

ここを読んだ時に、どこかで読んだ覚えがあると気になった。ググって行って、グリムの『伝説集』の1話だった昔読んだと判明。Diez Schwinburg譚がそれで、日本語だと上に述べた2書に見る通り。ドイツ語だと、まず毎度おなじみのZeno.orgを参照(このページ)、次に原書であるこれを参照(203~204頁)。

さて、StörtebekerからSchwinburgまでつながる糸が有るのだろうか。(大元は斬首後に首抱えて6km歩いた云々のパリのディオニュシウスの故事あたりなのだろうが、さすがに文献的考証ができなさすぎ)このモチーフつながりを扱っているウェブ上の記事がMünchner Sagen, G‘schichten und Legenden | Am Marienplatz Teil 2のみ。読むと、「Diez von Schaumburg」が1330年に部下4人と捕らわれて例のこと持ち掛けて部下助かる、1401年にKlaus Störtebekerが同じことになるが部下73人斬首される、斬首人が大量殺戮感心された所何なら裁判員どもにもやったるでと言うとバレて自身斬首された、と書いてある。それだけ。

次回の記事に続く

 

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