という自由闊達な文体だが、バロックから下ってレッシングの文章でもそうだったりする。Damon, oder die wahre Freundschaftから:
<第1場>
[…], daß ich es ihnen selbst habe deutlich genug zu verstehen gegeben, […]
定形中置と第2分詞の間にいろいろ詰まっている。詰まっている文肢たちだが、文末から動けない不定動詞(意味担当動詞、今だとgegeben)に緊密密接に係ってセットを成している(deutlich-genug-zu-verstehen-geben状態)ものだから、定形が遠慮して遠のいている。前回記事で書いた問題、このようなセットの間には定-助動詞(定形)が割り込めないという問題のことである。で、その詰まっている文肢たちだが、まず、この記事後半部分で見ている本動詞を直接修飾する副詞(manner adverbials)である。次に、不定詞句である。
<第7場>
Hätte ich mirs deswegen so sauer werden lassen? Versteh Er mich. Fünfmal habe ich müssen schwören. Fünfmal hätte ich also umsonst geschworen? Versteh Er mich.
他の箇所でもだが「versteh Er mich」がひたすらウルサいことでコミカルを演出させられているORONTEの台詞だが、「schwören müssen」しかムリな語順がこの通りである。一方前文(Hätte […] werden lassen)など正語順だ。よう分らんなら日本語で考えたらええ:成ラサス/言ワザル。で後者がおかしい。これは、前回記事末尾で確認したケース、副文中末尾の不定動詞が2つだけなのにその内の【定-助動詞が直支配している不定動詞】(前々回記事)が定-助動詞直右移動をしてしまうというケース、これのようなものと見るしかないだろう。つまり
- […] die […] hätte sollen kund werden.
- […] daß […] hat müssen inne werden / […]
- Fünfmal habe ich müssen schwören
という構造だと。
この作品、他にも、定形中置の話とは関係ないが、
<第10場>
[…], ich habe die Freundschaft oft genennt, aber sie heute erst von Ihnen kennen lernen.
なども面白い。言うまでもなく第2分詞がkennengelerntなのだが、lernenは第2分詞にErsatzinfinitivが可なのである。lernenに代替不定詞が可であることまで網羅しているページもそうそうなく、Die deutschplus-GrammatikのWORTGRAMMATIKのVerbのKonjugation IndikativのBesonderheitenのErsatzinfinitiv(なおウェブ上典拠をこのように示さねばならない事についてこの記事を見られよ)のページぐらいがすぐに見つかるものである。と言うか、この記事で紹介した
を買え。全部載っとる。その他にも、装いだけ小奇麗で中身スカスカの「必携ドイツ文法総まとめ」と違ってドイツ語文法のあらゆる項目を網羅している神本だ。
さらに、他にも、定形中置の話とは関係ないが、
<第10場>
Vetter, Vetter, sage Er ihr ihn doch! versteh Er mich.
なども面白い。人称代名詞の順守語順(1格→4格→3格)を破っているが、„ihn“(=„ein hübscher Bräutigam“)を強調しているのだろうか。とにかくたいっがい破格表現である。