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しばいてくぞ

副詞を制する者はドイツ語を制す (5) 副詞の順序

 

前回の記事から

ドイツ語の副詞には語順規則が有る。

それを解説できてる日本語の文章はこの記事以外には存在しない

この記事の冒頭に見るようにそもそも構文全体に語順規則が有るのだが、1文中で、1234格の主語/目的語という結合価(Valenz)それよりも重要な述部動詞密接一体者たちが数が決まっている一方で、副詞語句のほうは文中で数に制限がない。また、結合価たちの場所が決まっていて、述部動詞密接者たちの場所が文末(付近)でほぼ不動である一方、副詞語句の位置は色々である。よってその順序規則を確認することになる。今貼ったこの記事の冒頭のアフィの2書『Hammer's German Grammar and Usage』、ドイツ語語順規則は固より、この副詞同士の語順規則を精確に明かしている唯一の本でもある。断定する。もっかいアフィ貼って出典明示もすると、

Hammer's German Grammar and Usage, 4Ed (Reference Grammars Series)

Hammer's German Grammar and Usage, 4Ed (Reference Grammars Series)

  • 作者: Martin Durrell
  • 出版社/メーカー: Routledge
  • 発売日: 2002/07/25

の21.6.2(486~488頁)か、

Hammer's German Grammar and Usage (Routledge Reference Grammars)

Hammer's German Grammar and Usage (Routledge Reference Grammars)

  • 作者: Professor Martin Durrell
  • 出版社/メーカー: Routledge
  • 発売日: 2011/05/27

の21.6.2(468~469頁)に副詞の語順規則が書いてある(別に最新の版にも載ってるだろうが)のだが、その副詞たちの分類・解説が他のページだし、本記事の以下の記述も何のこっちゃ分からんとこある筈で、要するに、買って読めというのが一番言いたいことである。特に、ウェブ上に溢れてるドイツ語副詞の解説の全部(断定する)が、補部(complements)である副詞状物と本来の副詞(freie Angaben)の区別すら知っていないのだが、これも、買って読めば判ることである(この記事も参照)。だから次の引用は、この本の、でなく、今 ↑ 記した箇所だけに於ける知見のわずか一部に過ぎない。ドイツの副詞語句は、

文発話者判断根拠など観点など場所述部動詞直接修飾者

の順である(Ram Singh habe sich am frühen Montagmorgen mit einer Bettdecke im Hochsicherheitsgefängnis Tihar erhängt, […])。が、この順も他の語順要因に影響されていくらでも変わる。そういった要因の種類や等級や意義などもすべて、極めて平明にしかも事細かに書いてあるから、とにかく買って読め。最新第6版でもいいから(安いんやし!!!!!)。こんなブログに頼んな。

まずアホはここから間違いそうという所だが、副詞は別に「語」に限ったものでなく(とにかく「語」を見るな)副詞語句である。副詞語句を列挙した文体が特徴的な フェリックス(フェーリクス)・ダーン(Felix Dahn, 1834–1912)のテキストに好例が多いからそれを見て行く。副詞語句を多数連ねることが多いだけなら古典的文章の何でもそうである気がするのだが、それらは長文であっても1(主・副)文につき1~2個の副詞だったり文肢が沢山なように見えて関係文やzu付不定詞句など位置が決まっているものを使っているとかなので、副詞句の順番に悩む所がほとんど無い。だからサンプルとして専らダーンの作品を参照する。また、位置が問題にならない副詞と、副詞の中に入っている補部(であって副詞ではないもの)は、そうと分かるように、着色を外してある。

まず、 この記事で見た『エブロイン〔Ebroin〕』冒頭の諸文から。

In einer Sommernacht des Jahres sechshundertachtunddreißig nach Christus wurden vor den Thoren von Poitiers zwei Kinder geboren.

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zwei Kinder gekoren

 

の副詞と場所の副詞。1格主語だが、文中新情報なのでこんな文末に来れてる。典型的には定冠詞が付いていない物がそうだが、新情報であるなら定冠詞が付いていても文末のほうに来る。

というより、文末に来てるとかどうとかいう問題ではなくて、それはただの現象面であって、文末に来てるものが文中で言イタイ事つまりRhemaなのだという本質面を見るように(これも傾向であって、Rhemaが文頭に来ることも幾らでもある)。

In der gleichen Stunde lag in der binsenbedachten Knechthütte des Nachbargrundstückes das Weib eines Unfreien dem Tode sehr nah.

この3格語句は目的語と言うよりnah|liegenの補語である。「sehr」だが、動詞不変化詞Verbpartikelに係っている副詞であって位置が問題にならないとも取れるが、いやnah|liegen全体に係っている述部動詞直接修飾者であるとも見れる。

Vierzehn Jahre später | an einem schönen Herbstabend sprang ein starker, freudiger Knabe über die Schwelle des ehemaligen Knechthauses herein: […]

の副詞句が2つある。つまり前域に文肢が2つ有る。1かたまりになっているのかも知れない。今回は補部が、補部として傾向的に頻出する前置詞句である副詞句じゃないぞ)。

Der antike Bau war freilich im Lauf der Jahrhunderteschon unter Chlodovechvielfach den Bedürfnissen des germanischen Lebens und eines fränkischen Königshofes angepaßt worden: […]

文発話者判断の副詞がなっかなか見当たらん文体である。3格句、あくまで補部であって、目的語と見ないように。観点などの副詞がやはり後に来ている。

Der alte Waffenmeister des Königs, Waltarich der Mariskalk, sah, [auf der vorletzten Stufe der Marmortreppe sitzend], [den Rücken an die oberste gelehnt], einen mächtigen römischen Silberhumpen Weines neben sich], [mit zufriedenem Schmunzeln] dem lärmenden, freudigen Treiben zu: […]

[根拠などの副詞句]([ ]で囲ってる部分全体が副詞、補部等から着色外してる)が4つ、その中の副詞みたいなものは補部。副詞じゃないぞ。

 

ダーンの他の作品を見に行く。Herzog Ernst von Schwabenの冒頭から。

In der weiten Halle des Mittelbaus stand in der Nische des einzigen großen offnen Rundbogens am Morgen des Pfingstsonntags ein Mann in reicher bischöflicher Tracht [in vertrauter Zwiesprach mit einem erheblich Jüngeren im schwarzen Priestergewand, [der ehrerbietig in das kluge, überlegen blickende Auge, in die feinen, scharf geschnittenen Züge des Ältern emporsah]].

場所の副詞前置詞句が2つあって、の副詞前置詞句がそれの後に来ている。これは、「聖霊降臨祭中の日曜日の朝方に」という情報が《どこで》情報よりも(若干)重要だからである。詳しくはとにかく ↑ のHammer'sを買って読んでくれ。[根拠などの副詞句]が、[関係代名詞副文]が付いてデカくなっている。この副文の中にも根拠などの副詞句が有る。なお「in das [… ] des Ältern」はempor|sehenの補部であって副詞ではないからな。間違うなよ無知ども。ちなみに「einzigen großen offnen」といった形容詞連続だが、こういうのは、コンマ有りと無しで違うからな。有りなら全部名詞に等しく係る、無しなら名詞に近いほうが名詞に密接。今の場合なら「1つきりの大開アーチ」。「einzigen, großen, offnen」だったとしたら「アーチが有ってそれは開いてて・巨大で・1つきりである」。

Die Grammatik: Unentbehrlich fuer richtiges Deutsch

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の345頁と

詳解ドイツ大文法 POD版

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の50~51頁な。

»Ohne Zweifel – der Vater. Andersvielleicht – der Sohn.«

文発話者判断の副詞が台詞の中ぐらいにしか見つからん。このように「sonst」の意味でなければ「anders」は述部動詞直接修飾者

Ein paar hundert Schritt vor ihnen zweigte von der breiten Landstraße | zur Linken | in den dichten Wald von Tannen und Buchen | hinein ein schmaler Reitpfad ab – […]

場所の副詞前置詞句が2つとも5つとも取れる。

[…] – wohl ist er dir treu, ich weiß, bis in den Tod!

この通り文発話者判断の副詞というのはまず確実に文の先のほうに来る。それはメタ的な要素であって、本動詞との結合がごく弱いからである。「treu」は副詞ではないが形容詞である訳でもないから、補部だから!!!!

[In dem stolzen Bischofshaus zu Mainz, [das unmittelbar an die Rückenmauer des altehrwürdigen Domes stieß]], stand [in eine Fensternische gelehnt] Aribo [in tiefem Gespräch mit einem gar stattlichen Manne, [der den über mittelgroßen Erzbischof noch erheblich überragte]].

念のためもっかい言っとくが、補部であるan前置詞句やin前置詞句を副詞扱いすんなよ。補部に係ってる「unmittelbar」などは副詞同士の語順上は問題にならないからな。[根拠などの副詞句]が2つ。定動詞や結合価を挟んで副詞語句を連ねている。

 

ダーンの他の作品を見に行く。Attilaの冒頭から。

[…] die, [an den beiden Uferseiten oft in Schlamm versumpfend], auch in der Mitte des Bettes die ungeheueren Massen ihrer Gewässer nur träge vorwärts wälzten nach Osten: […]

[根拠などの副詞句]の中で場所の副詞→の副詞。なお「in Schlamm」は(分詞の)本動詞の補部であり、「vorwärts」は動詞不変化詞Verbpartikel)(いわゆる分離前綴り)であり、「nach Osten」はこの不変化詞に係ってる句、すべてfreie Angabeとしての副詞ではないからな。

Sie schritten nach dem spitz zulaufenden Ostende des Eilands, wo ein Floß, aus sechs breiten Balken kunstlos gefügt, auf das schlammige Ufer gezogen und [durch ein vor dem oberen Querbalken senkrecht in den Uferboden getriebenes Sperrholz] fest gehalten war.

副詞ではない(補部である)ものを副詞扱いするなよ。関係副文の中にある観点などの副詞の中に更に場所の副詞と述部動詞直接修飾者が入っている。

 

Die Bataverの第2書第19章から。

Mit ohnmächtigem Grimm sah Cerialis auf dem linken Ufer | vor seinem in Schlachtordnung gestellten Landheer, [zu Roß auf und nieder jagend], die Auflösung und Flucht seiner Flotte mit an.

根拠などの副詞の後ろに場所の副詞が2つ来て、[根拠などの副詞]が1つ来てる。この[根拠などの副詞]の句の中で根拠などの副詞→場所の副詞と副詞が並んでいる。

 

Fredigundis冒頭から。

Hastig, unberechenbar schießt sie dahin, [launenhaft die Richtung wechselnd], wie in neckischem Spiel.

このようにどうランダムに抽出してきても、副詞の語順が、冒頭に引用した『Hammer's』の図式のほぼそのまま通りであるのが見て取れる。