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しばいてくぞ

カメラを変えたカメラ(Google Pixel 4)

小指の微笑み

小指の微笑み

  • 渡辺 麻友
  • 発売日: 2014/04/02
  • メディア: MP3 ダウンロード

 

前回の記事から

いとして、要するに、(まだ出来ることは少々(当たり前)だが、)スマートホンなのに触らないで操作できるようになって来たということである。ちなみにMotion Senseが解禁されていない国に持って行ってウェブにつながると、この国ではまだ使えませんよというメッセージが出て来る。豆な。

 

(後記: Samsung Galaxy S20 Ultra 5G (SM-G9880)のAmazonのページのレビューの1つに、Huaweiと比較しながら当機の「画質はPixel4に超望遠と広角をつけた感じ(つまり完全無欠だと思います)。」と書いてあるが、これはつまり、Pixel 4のカメラが最高水準だということを言っているのだろうか。)

カメラ機能に戻るが、どんなハイエンドスマホたちが暗所を鮮明に撮れても、Pixel 4がひとり夜の魔術師たることには違いがない。例えばずっと見てきた夜景モードだが、明るさを最大限にして撮ると、

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こんなんになる。これは昼の露天ではない。夜の真っ暗な路地裏だ。

このようにPixel 4というのは夜から夜を奪ってしまうような代物なのだが、こうして得られる絵ときたら、もう、肉眼で見えるものなり自然な視覚風景なりそういったものとどうたらうんたら云々といった事とは関係がなくなってしまっている。リアルな表現だとか、忠実に収める道具としてのカメラだとか、そういった文脈と手を切ってしまっている。そこまで言っていいだろう。おそらく、Pixel 4は、ひとり、見えるものや見えるはずのもの云々といったハナシに縛られず造りに造った人造世界を演出するという独特の道を行っている。それが、ソフトウェアがすんごいということの真意味だろう。

本機のカメラ機能について発売当初から無数の評言があるが、ほぼどれも、Pixel 4がやろうとしていること・やってしまっていることの真命題が分かっていない。一方、こんなことを考えながらググってたら見つかる分かっている人の文章(別所隆弘氏の「Googleスマートフォン Pixel 4が切り拓く「カメラの再発明」と「写真の再定義」 」)を読むと、Pixel 4が如何に撮影というものを革新してしまったかが伝わる。というかこの文章非常に見事に書かれてあって、こっちを読んだほうがずっといいから、本ブログなんか読んでんと、この文章を読んでください。

(ここまでの記事がすべてそうだが何とかPixel 4をいいようにいいように言おうとしてい(て、実際それだけの機種だから言うことができてもい)るが、それは、自分が持ってるものをええようにいうのがヒトの性癖だからである。)

で、上の絵のようなんが撮れる視覚世界造り能力つまりソフトウェア能力が、
デュアル露出補正(Dual Exposure Controls)」、シャッターを切る前のプレビュー画面でリアルタイムでHDR+調整ができる機能、これである。

本シリーズのこの記事でも触れた機能で、←この記事冒頭に貼った画像から言うと、画像の下端に出ている2つの目盛りの右側(露出補正ハイライト)が明るさ調節で、これをグンと上げると上掲画像のように夜を殺してしまえれる。次に、2つの目盛りの左側が暗部補正シャドウ調節で、これを上げると、影かかって暗くしか見えないオブジェクトが、(現実視覚風景と違って)クッキリ見えるようになる。だから、モノをハッキリ見たいか・シルエットが欲しいかでシャドウを調整する。ただ画面上タップして自動でハイライトシャドウを設定してくれるから、こっちにしといて自分でイジらんといたら、そこまで不自然な光配置にならないことになるのだろう、知らんが。

例えば曇った日に見える風景の普通は左のようなものだが、シャドウを調整すると右図のようになる(ハイライトは触っていない。以下同じ):

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やはり、「見え」ているものが「撮れ」ていると言うのに抵抗があるような絵だろう。この記事で書いた【肉眼ではどれだけ暗く見える風景でもPixel 4には豊富な光の情報だらけ】という事柄も思い出したいが、それでも、右図のような画像は、高度な集光レンズに映ったモノそのもの自体というよりはずっとはるかに、ソフトウェアが光情報を元に人工的に制作した制作物である。

細かい違いを見てみよう。上から下にかけてシャドウを少なくしている。

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上から下にかけて、リアルで物語の有る(文字通り翳の有る)絵から、物体をハッキリ見せてやるよというAIの人造作業になっていっているのが分かる。最下段のように「見」えることなど無い。それは撮るものであり造るものであり演出するものであり、ITの時代の申し子というべき産物である。

例えば照明のない地下的な場所などがどう「見」えるかと言うと、勿論こう「見える」より他ない:

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これが「見え」というものだ。これ以外に見えようがない。しかしPixel 4が暗部を奪うと、

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という風に「撮」れることになる。Pixel 4は闇を抹殺する。

もう一度言うが、目の・肉眼の体験がだいたいこんなようなもの

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なのだろうと提示するPixel 4は、指定すれば、

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という像も提示する。影とは何なのだろうかと考えさせられ、従って同時に、光とは何なのだろうかと考えさせられる。

 

明らかに、スマホカメラが普通のカメラと競っても仕方なく、これを範にし続けても仕方がないし、そんなことをしていないだろうし、そんなことをしていないのがスマホカメラというものなのだろう。Google Pixel 4が特に顕著にやっているみたいに、絵を収めながら同時にAIが仕事をするというカメラ、それがスマホカメラなわけだ。

そしてそういったスマホカメラの自分らしい在り方(Bestimmung)を最もまっとうしているのがPixel 4なのかもしれない。ありのままを写し撮ることこそしないで、加工し人造した世界を造る。だからズーム機能にこだわったのかも知れない(目玉機能の「超解像ズーム」)。

例えば「4」で搭載されなかったとさんざん非難されている超広角だが、非難している者は、Googleスマホのやろうとしていることが分かっていないと言うしかない。超広角で撮れる絵は肉眼視に近いものである。これを仮に超々々々…広角していけば、いずれ、見ているがままの風景に近付いていくだろう。

(とはいえ、超…広角も、ちゃんと言えば、肉眼視風景とは別物である。脳が処理し見せるのは、意味の世界である。それは広角的ではないし、描いたものとしての「立体」が見えているのではないし、絵画遠近法的ではまったくない。撮影や描画は自然を再現しないが、しかし脳も自然を見せてはいない。「自然」(な風景)など、存在しない。

また、超…広角ほど線が歪む。しかしそれは、四角形の枠内で見るからそう見えているだけだ。しかるに写真や絵が四角形(というか長方形)であるのは、歴史的偶然にすぎない。描くブツたちの事情、下部構造に因るものにすぎない。円や球に描く歴史だったなら、広角撮影写真の「歪」みなど誰も云々していないかっただろう。その時には別の意味の歪みが云々されていただろう。それでも、結局は云々にすぎない。1つの枠から判定しているにすぎない、歪みにせよ印象にせよタッチにせよ「センス」にせよ「光」にせよ。一方眼に見えているものには枠は無く、且つどんな枠でもある。おそらく、超…広角が眼とは無関係であ(り眼の特性でもあ)るように、ズームや望遠や圧縮効果は眼には出来ていることであ(り眼には関係ないことであ)るのだろう。まあ眼というか脳だ。眼球とその周辺のようなハードウェアごときでは、視覚野というソフトウェアの偉大さの足元にもおよばない。)

しかしそんな「まま」なんてのをGoogleスマホは追求していない、逆を追求している:いかに撮るかでなくいかに造るか。いかにソフトウェアに仕事をさせるか(現代はソフトウェアの時代である

)。

広角の反対の望遠の方向がそうだ。それは自然ではない。広角で撮れたものを見ることは自然に見ること(むしろ生物は広角の見方しかできない)であるかそれに近いが、一方ズームして見ることは是いかなる生物にも出来ない(ズームされているような視野を持っている生物が居たとしてもそれは元々がそうだというものであって悪魔でズーム「する」ことは出来ない)。

超広角なんてほったらかしといてそんなレンズ搭載もせず超解像ズームに傾注したPixel 4が、2019年で最も正答を出したカメラスマホなのかも知れない。言うまでもなく、正答とは万人に受け容れられるものではない。

次回の記事に続く

 

サヨナラの意味(Type-A)(DVD付)

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