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しばいてくぞ

魔王が落とした日航ジャンボ (5)

 

前回の記事から

このように、ラムシュタインの「ダライ・ラマDalai Lama〕」というのは、日本航空123便(ボーイング747SR-46)墜落事故に於ける空中での様子を描いているように見える。そしてその上で、犠牲者への鎮魂歌であると結論したい。根拠として、ラムシュタインの作品傾向を見る。

1つの目立った傾向として、「ダライ・ラマ」のように事件・事故を扱う事である。

繰り返すが、こういった傾向は、日本以外の軽音楽シーンではそない珍しいことではない。とはいえ、ラムシュタインの曲は、こんな歌詞を日本でリリースしたら騒ぎになるというような問題の多い内容ばかりである。

  • 例えば、肉感的なほうの男性同性愛を賛美する「百合を咲かせるか?〔Mann Gegen Mann〕」(ラムシュタインでというよりMV史上で最上位級のMV)。
  • 欧州での買春をテーマにしている「春の光 近づいた夏〔Frühling in Paris〕」というRammsteinバラード最高傑作。
  • 1984年から2008年までの24年間いた監禁事件の「フリッツル事件」を題材にした「大人になる前に〔Wiener Blut〕」。
  • 墓地での屍姦を描いた「恋を踏んじゃった〔Heirate Mich〕」。

枚挙にいとまがない。他に、例えば「心に太陽〔Sonne〕」など、ボクサーのビタリ・クリチコ(Віталій Володимирович Кличко)に向けて作った曲だとリンデマン自身が言っているのだが、核爆弾投下を描いた曲であるとする解釈する人もある

春はどこから来るのか?

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次の傾向として、やはり「ダライ・ラマ」のようにドイツ語古典をモチーフに取り入れることである。

  • 例えば、上記Donaukinderが「ハーメルンの笛吹き男」を含意している。これは誰でも気付く。ごく一例だがこのページの「Tigrella Nov 13, 2009 at 12:34 pm 」。
  • 「タブーの色〔Roter Sand〕」がフォンターネの『エフィ・ブリースト』だと言う声がある(このページ)。
  • 「ひらがなで恋したい〔Rosenrot〕」がやはりゲーテの今度は「野ばら」を改変したものだという事、歌詞からして、知らぬ人気付かぬ人なし。
  • 「Ambulance〔Hilf Mir〕」がホフマン(Heinrich Hoffmann, 1809–1894)の絵本『もじゃもじゃペーター〔Struwwelpeter〕』(1845)中の「マッチによる悲惨な話」だが、これなど、歌詞が、文学モチーフ系では最も原テキストに忠実にしてあるので、気付かないほうが無理である。

いずれにせよどの作品も、私見では、原作の世界をはるかに超す次元に昇華したものである。そしていつも破滅を描く。だが「ダライ・ラマ」ではやや違う。子供だけでも救おうとしている。今から何分後かにボーイングが山の中腹に激突して凄惨極まりない遺体たちになるという乗客の中で、子供だけがそのような死に方を免れるようである。文明の増上慢で舞い上がった人間たちが地獄の底まで突き抜けるような衝突、これの前に子供は空中で死を迎え、空の園に迎えられる。ただ、子供は邪神のはらからに連なるようなのである。結局他の飛行機を落とす悪霊になるのだろうか。