地上最強のブログ

しばいてくぞ

二重完了(総合から分析へ) (1.2) 注記

 

前回の記事から 

つまり事は文法上の話であって、言語に関しては こういうのが大人の話である。「総合」というのに関して、合成語を作っていく話など、ごく低次元であり全く他愛のない話である。例えば無知たちが大喜びしてるこんな話題。それから他に、あの例の無知喜ばせの

  • Donaudampfschiffahrtsgesellschaftskapitän

など。図体デカいだけで、かろうじて次の文法情報を表示している名詞に過ぎない(前回記事äßenと比べよ):

  • [名詞]男性・単数・1格[意味:ドナウ川蒸気船会社船長]
    パナマ運河(川栄李奈、松井玲奈、峯岸みなみ、渡辺美優紀)

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それも、冠詞の助けが無いから正確な情報でなく、本当は

だけしか表示していない、とも言える。ショボ!!!!!他方、簡素な

  • suche

に、

  • [定動詞]主格主語と対格目的語を要する2価動詞・主語単数・現在時制[意味:探る]

という文法素性+語意が詰まっている(実際は(補部としてのnach前置詞句及び)主格主語を要する1価動詞でもあるのだが、それは措く)。情報量豊かなのが定動詞であるが、しかしこれとて、今の例だと、直接法・1人称接続法・3人称かが未決定である。一方古高ドイツ語の同じ定動詞だと、

  • suochu

であるが、ここには、

  • [定動詞]主格主語と対格目的語を要する2価動詞・主語単数・現在時制・直接法・1人称[意味:探る]

と、もっと沢山の情報が入っている。もっかい言うと、新高ドイツ語での同一物だと直接法・1人称接続法・3人称かが分からんかった。他方古高ドイツ語で後者ならsuocheである。曖昧さが減っている。それは変化形がヨリ複雑だからである。他にも、新高ドイツ語で曖昧であってしまっているケース、例えば„suchen“などを見てみると、

  1. [動詞不定形]主格主語を要する1価動詞・[意味:探る]
  2. [定動詞]主格主語と対格目的語を要する2価動詞・主語複数・現在時制・直接法・1人称[意味:探る]
  3. [定動詞]主格主語と対格目的語を要する2価動詞・主語複数・現在時制・直接法・3人称[意味:探る]
  4. [定動詞]主格主語と対格目的語を要する2価動詞・主語複数・現在時制・接続法・1人称[意味:探る]
  5. [定動詞]主格主語と対格目的語を要する2価動詞・主語複数・現在時制・接続法・3人称[意味:探る]

と曖昧な形態であり、実質主格主語と対格目的語を要する2価動詞[意味:探る]しか表示出来ていないのであるが、これが古高ドイツ語だと、1.suochen、2.4.suochemês、3.suochent、5.suochênである。曖昧さが相当に減っている。で、判っただろうが、「変化形が複雑」と言っても「1形態でヨリ沢山の事柄を表示できる」と言っても別にどっちの言い方もできる。ただ、前者だと、低次で教条的な感覚である。そして上のsucheに戻ると、これで直接法・1人称をも表示するとすると、「ich suche」と2語要る。古高ドイツ語と対照すると、

  • 直接法・1人称をも総合してあるsuochu(ahd.)をich suche(mhd.)に分析
  • 接続法・3人称をも総合してあるsuoche(ahd.)をes/sie/er suche(mhd.)に分析

である。古高ドイツ語→新高ドイツ語という推移に於いて総合的1語→分析的2語というプロセスが進んでいる、ってことが理解できる。

言うまでもないが別に同一言語に限った事ではない。時代の流れで言語がこうなって行くことを言っている。分析化が進み過ぎている現代英語と、屈折変化の見本市・古典ギリシ ャ語から、SUCHENの定動詞を取り出してみよう。実にこうである:

  • ζητηθήσομαι(1形態)
  • I am going to be looked for7形態!!!)

そして印欧語族のように時代が下るのと分析が進むのとが一致していることが多い(アイスランド語なんかが例外、有名すぎ)語族と違って、他の語族・諸語では、現代でも総合傾向をたっぷり有している言語がたっぷり有る(そして今こうしている間にもどんどん消えて行っている。例えば、

消えゆく言語たち―失われることば、失われる世界

消えゆく言語たち―失われることば、失われる世界

例えば抱合という形態特徴の有る言語たち。他に、ナバホ語(ナ・デネ語族/南部アサバスカ諸語)語の説明などを見ると、

  • ádaashleʼ
  • [定動詞]主語+目的語を要する2価動詞・3人称が目的語で且つそれが複数・1人称が主語・相がDiversative・モード(法)が未完了[意味:建てる]

である(„PL-3.OBJ-1.SUBJ-make-DIV-IMPF“)。

ところで、以上見てきた語分析によって、語形態の多様性が消失して行く。それは今までに見て来た屈折変化のことだけでは全然ない話だが、それに限って言うと、例えば、würde- … Infinitivで済ませれば、接続法第2式形をどんどん使わなくなり、この形の動詞変化を忘れていく。HABEN(Präs.) … Partizip IIで済ませれば、強変化もなんも覚えんでよくなってく。英語が辿った歴史のごとく単純化の一途。シュレーゲル・ボップ・シュライヒャーを想起するだろう(ところで言語=有機体説こそ言語観として最も正しいのではないだろうか、19人世紀人らとは全く別の意味で)。こういった話題に関して、

言語が違えば、世界も違って見えるわけ

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の125頁~など参考になる。あと、形態の多様性を失うのと語彙が増量して行くのがある程度軌を一にしていて、言語が貧しくなっていくとか単純にぬかしたらあかん。かと言って、どっちでもいい・判断から免れてる、とも安心すんな。少数民族の生活を破壊して文化言語民族の多様性を抹殺する開発行為によって得られた資源で都市の物質文化が多様で豊かになってくのと並行した話や。

さて、ここで、抱合屈折膠着孤立のサイクルという言語史上の極大プロセスも絡んでくるのだが、
もう知らんがな。