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名詞の性 (2) 「生物性」ではない

ずっとずっと先の今日(セレクション18)

ずっとずっと先の今日(セレクション18)

  • SKE48
  • 発売日: 2013/11/20
  • メディア: MP3 ダウンロード

 

前回の記事から 

有名な話だがタミル語(ドラヴィダ語族南部ドラヴィダ語派タミル・カンナダ諸語)で文法性が自然性に一致するという話がある。どの言語でもそうだったらよかったろうが、どっこい言語とは恣意的なものである。

ドイツ語の名詞性も、生き物なら、自然の性と文法の性がたいがい一致するが、だからどうという情報ではないし、一致しないケースもある。

「夫(Mann)」が男性名詞で「妻(Frau)」が女性名詞で「子供(Kind)」が中性名詞という、ほうぼうで繰り返されてしつこい話題がある。一方「孤児」が男女問わず女性(die Waise)である。社会問題だろう。「吸血鬼」が男性名詞(der Vamp)なワケだしな。男女問わず、

  • 「人質(Geisel)」が女性
  • 「天才(Genie)」が中性
  • 「頭領(Haupt)」が中性
  • 「個人(Individuum)」が中性
  • 「素人(Laie)」が男性
  • 「死体(Leiche)」が女性
  • 「遺骸(Leichnam)」が男性
  • のモデル(Mannequin)」が中性または男性
  • 「メンバー(Mitglied)」が中性
  • 「被後見人(Mündel)」が中性(女性・男性も有り)
  • 「人(Person)」が女性
  • 「守衛(Wache)」が女性
  • 「女(Weib)」が中性

であり、《自然の性と文法の性が一致》すると 限らないのである。

  • ミツバチと来たら、オスが時々女性(die Drohne)で、メスが時々男性(der Weisel)である(語尾で性を見抜くように。次回以降参照)。
  • 雄雌ともに牝性名詞でしか表せない「ネコ(die Katze)」だが、長靴を履けば牡にもなる(der Kater)ものの、そうすると今度はメスをはっきりさせる必要がある(die Kätzin)。ものの、「die Katze」で特に「雌猫」も可。
    (それにしても、「雌雄」も「牝牡」も、どっちがオスかメスか読みづらくオススメできない。読みやすい「m.」「f.」を推すしかない。)
  • 猫ならKa-でつながっているが、犬が難儀。まず犬一般が「der Hund」、メスが「die Hündin」、なるほど、オスが「der Rüde」?!、そして、どの動物の「仔」も中性なのに、「仔犬」だけ「der Welpe」…。3異形態からなる体系。
  • 馬ときたら4形態だ:「das Pferd(馬一般)」・「der Hengst(押忍)」・「die Stute(メス)」・「das Fohlen/Füllen/Enter(仔)」。
  • 牛だとオスで既に3形態だ!「der Stier」または「der Bulle」を去勢すると「der Ochse」。
  • これら欧州圏に馴染みある動物と違って「ゾウ(der Elefant)」などやっつけ仕事で、オスが「象オス牛(Elefantenbulle)」、メスが「象メス牛(Elefantenkuh)」、仔が「象仔牛(Elefantenkalb)」。

さてそうであるなら、名詞の性を見抜く上でそれが中性《らしい》か女性《らしい》か男性《らしい》かという雰囲気など手掛かりになるだろうか。ほぼならん。

馬が中性的でネズミ(die Maus)が女性的なのか。では何故「イモ虫(Wurm)」が男性か。いま鳥の名詞を若干挙げると、大きい順に例えばこうだろう:

以上の語群を見ると、「自然の性=文法の性」などというお題目が鵜呑みにできなくなる。これが部分的問題だとしても、生き物以外の名詞が性判断が大変だ。ここでは何が何でも♂・♀で考えるな。言い換えると、意味で考えないで、形式で文法で=語形で考える。

以上の語群を見ると、弱変化男性を除いて「-e」で終わっている名詞がどれも女性である(-inなど今更言うまでもない)。語意じゃなくて語形を見よう。意味じゃなくて形式を押さえよう。「太陽(Sonne)」が女性で「星(Stern)」が男性なのは、神話学の問題ではなくて、-e語尾名詞の90%以上が女性で単音節名詞の多くが男性という文法上の問題である。(そして女性名詞の90%以上が複数にするとき語尾-nのみ。単音節女性名詞の約4分の1が 幹母音ウムラオト+-e語尾(die Nuss / die Nüsse)で複数形。)

ところで、食器問題がある。スプーンが男性(Löffel)、フォークが女性(Gabel)、ナイフが中性(Messer)、以上のセットが中性(Besteck)、語形にすら何の法則性も無く見える。いや法則は無いのだが傾向が有る。次回の記事次々々々回の記事に記す。

次回の記事に続く